「職場のオフィス内に観葉植物をよく見かけるけど何か効果があるの?」「オフィス内のグリーンはたくさんあるほうが良いと聞くけどどうなの?」など、自分が働く環境の中で、何気なく考えるときがありますよね。
結論を言うと、緑視率が10~15%のオフィス環境が最適です。その環境にいるときに人のストレスが減り、パフォーマンスが最も向上するという研究結果が出ており、緑視率が25%を超えると逆に緑が多いと感じる人が増えることもあり、最適な緑視率の範囲で導入することが重要です。
快適なオフィス作りに欠かせないグリーンの魅力を詳しく解説しますので、一緒に見ていきましょう。
緑視率とは
敷地の緑化の度合いを客観的に伝達するために、「緑視率」、「緑被率」、「緑地率」という指標が用いられます。中でもここで取り上げている「緑視率」は、わかりやすく説明すると、人間の視界に見える緑の量(割合)を表します。(※1)
国土交通省が東京の66プラザやビルの屋上緑化空間で行った調査(※2)によると、緑視率が高い場所ほど「安らぎ」、「さわやか」、「潤い」など快適性を高める心理的効果を感じたり、日差しを遮ることによって熱環境を改善したり、さらに、目に優しいなど物理的効果が得られることが分かりました。
オフィスグリーンを取り入れるメリット
オフィスグリーンを取り入れるメリットを今から紹介します。
空気の浄化作用
観葉植物には空気の浄化作用があることがNASAの研究結果でも発表されています。(※4)
特に効果の高い植物は「エコプラント」とも名付けられ、光合成を行うとき人間に有害な化学物質やカビも一緒に吸収するとされています。
具体的にどのような有害物質を吸収してくれるのか紹介します。
- ホルムアルデヒド
- 二酸化炭素
- 一酸化炭素
- ダニ
- カビ
- 細菌
- 塵埃
特にホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因となり、化学物質の細胞毒として知られています。室内のフローリング、壁、天井の合板などの製造に使用されている防腐剤、接着剤などに含まれており、オフィス内からも、ごく微量ではありますが発散されているので、意識して除去することが大切です。
葉の気孔から有害な化学物質を含む空気を取り入れ、吸収分解してくれる観葉植物は「自然の空気清浄機」と言えますね。
【参照】
(※4)Interior Landscape Plants for Indoor Air Pollution Abatement
https://ntrs.nasa.gov/citations/19930073077
参考:観葉植物で空気をキレイに!プロがおすすめする10選
https://www.fuji-ie.com/neue/life/210902/
目の疲労軽減
グリーンをオフィス内に取り入れるメリットとして、目の疲労軽減効果があります。現代の社会において、PCでの作業(VDT作業)は日常化しているため、この効果は大きなメリットです。
もともと長時間のVDT作業は、目の疲れ、視力の低下、ドライアイなど目に対しての負担は大きく、テクノストレスという社会問題となっており、このような問題を解決する上で、観葉植物を使用した実験が行われました。(※5)
場所や光の加減、食事の時間など、限りなく条件を同じにして実験を行った結果、植物を見ない時よりも、VDT作業中や作業後に植物を見ることにより、視覚疲労の緩和や回復の効果がみられることが確認され、また、観葉植物の種類の違いによって視覚疲労の緩和・回復に差がみられたことも発表されています。
グリーンが目の疲労を軽減する理由は、可視光線の波長が中間にあるため、人間の目からみて一番見やすく負担の少ない色が緑とされているからです。昔から、遠くの緑を見ると目がよくなると聞きますが、それは遠くを見ることによる眼球運動と目に負担の少ない緑色を見ることにより、目の疲労回復効果が得られると考えられます。
そのため、オフィス内でひとつの場所に観葉植物を固めるのではなく、一定の範囲に小さいポット型の観葉植物やグリーンパーティションなどを取り入れると、移動する際も常に視界に入るので気分転換になるとともに目の疲労軽減効果を高めることにもなるでしょう。
【参照】(※5)
観 葉 植 物 を見 る こ とがVDT作 業 に伴 う視 覚 疲 労 に及 ぼ す 影 響
https://www.greenleafips.com/wp-content/uploads/2020/06/47_138.pdf
業務効率が向上
オフィスの雰囲気を明るくする
日本に居住する20歳以上の男女で、 会社員(正社員、契約社員)および経営者、役員など、およそ5,000人を対象にした農林水産省の調査では、オフィスにグリーンを置くことで従業員がどのように感じるのかという問いには、「社内の雰囲気が明るくなる、華やかになる」と答えた方が46%で1番高くなっています。他にも「リラックスできる」が35%、「優しい気持ちになる」が30%など、内面的な意見も3割を超え上位にランクインしています。
特に女性は半数以上の55%が「社内の雰囲気が明るくなる、華やかになる」と回答しており、「リラックスできる」という意見も女性の方が多かったことが分かっています。
また、若い社員や女性比率の多い職場、来客の多い職場、オフィス環境への満足度が高い職場は、花きを飾っている比率は高めという結果が出ており、職場内の雰囲気づくりの上でも、観葉植物はオフィスの雰囲気を明るくする効果が大いに期待できます。
是非、積極的にオフィスに観葉植物を取り入れましょう。
【参考】農林水産省調査結果:花や緑の効用・家庭とオフィスへの導入状況に関する調査について
オフィスに最適な緑視率は?
豊橋技術科学大学 大学院工学研究科 名誉教授の松本博氏らの研究によると、「緑視率が10~15%の環境にいるときに人のストレスが減り、パフォーマンスが最も向上する」とされています。
また、植物の設置効果は時間的推移があり、置いた直後はストレス値が上がりますが、時間が経過することでストレスは下がっていきます。
緑視率が25%を超えると、人は「緑が多い」と感じ、圧迫感やうっとうしさを与えることになり、空間満足度や作業効率は下がるので、最適な緑視率でグリーンを置くのがおすすめです。
【参考】緑視率
https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/word/15/327920/101000034/
設置する植物によって効果の差がある
オフィスグリーンとして置かれる観葉植物は、種類によって効果の違いがあります。
人気のある観葉植物は以下の通りです。
ポトス
成長が早く、手入れも簡単、耐陰性もあり、空気清浄能力が高い
パキラ
縁起が良い植物、耐暑性高い、インテリアとしておすすめ
スパティフラム
花が咲く観葉植物、有害物質吸収力が高い、耐陰性あり
フェイクグリーンでも効果がある
観葉植物を取り入れる場合、デメリットとして取り上げられるのが手入れや管理の問題ですが、代替案としてフェイクグリーンの導入も考えてみてはいかがでしょうか。
最初のコストはかかりますが、メンテナンスがほとんどいらないので導入は簡単です。フェイクグリーンについても、視覚的なストレス軽減やリラックス効果など、観葉植物と近い効果があります
最近は、空気をきれいにする効果がある光触媒フェイクグリーンも人気があります。
光触媒とは、チタンと酸素の化合物である酸化チタンのことで、酸化チタンは光を受けて空気中の酸素や水から活性酸素を生成し、接触してくる有機化合物や最近などの有害物質を除去できる効果を持っています。
近年は快適なオフィス環境が重視されているため、適正な緑視率の範囲で本物の植物ではなくフェイクグリーンを設置することでも、リラックスできる空間、円滑なコミュニケーションや作業効率を上げることができるでしょう。
人気のフェイクグリーンは以下を参考にしてください。
- ウンベラータ
- モンステラ
- ベンジャミン
- レモンツリー
- パキラ
本物の観葉植物にするか、フェイクグリーンを選ぶかは個人の好みによりますが、植物の手入れや管理が苦手な方はフェイクグリーンを導入するのがおすすめです。
まとめ
ここまで、オフィスに観葉植物やフェイクグリーンを導入するメリット・デメリットをご紹介しましたが、いかがでしたか?
視界に緑が入ることでリラックス効果を得られることや、空気を浄化できること、目の疲労を軽減できること、オフィスの雰囲気を変えられることなど、様々なメリットがあり、結果として業務効率の向上にも繋がるのではないかと考えられます。
そのような快適なオフィス環境を作るためには、快適さを感じられる緑視率に沿って適度にグリーンを取り入れることが大切です。ただ単純にグリーンを適当に並べるのではなく、最適な緑視率に合わせたグリーンの導入は、オフィス全体を明るく雰囲気の良い環境に変えることができます。また、従業員のメンタルの安定、集中力の向上による業務効率の最大化も大いに期待できるでしょう。
しかし、せっかくグリーンを導入しても、メンテナンスや管理に時間を奪われるのは本末転倒です。定期的なメンテナンスを専門業者に任せることを検討していただくか、自社で管理を考える場合は本物の植物にこだわる必要はなく、フェイクグリーンでも問題なく今回取り上げた様々な効果が発揮されることを踏まえて、改めて自社のオフィス環境を見直し、パフォーマンスが最も向上するとされる10~15%の緑視率に沿った適切なグリーンの導入を検討されることをおすすめします。
監修
舛田 羊一
- 舛田建築design研究所CEO
- 春うららかな書房 家具事業部 部長
- 一級建築士、環境経営士、宅地建物取引士
大手家具メーカーで家具の設計、国内上場企業のオフィスプランナーとして勤務。その後、2015年に現研究所を設立し、国内外のミュージアムプロデューサーやライブラリーなどの空間プロデューサー兼デザイナーとして活動中。
春うららかな書房では、空間プロデューサーとしてオフィス空間のトータルプロデュースを行っている。
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