『バイオ=生命・自然』と『フィリア=愛好・趣味』が組み合わされた造語『バイオフィリア』という考え方は、1984年にアメリカの学者、エドワード・O・ウィルソンのバイオフィリア仮説にて発表されました。
「人は潜在的に、他の生物や自然との結びつきを求めようとする本能や傾向がある」と提唱された仮説では、自然と触れ合うことで、人間は幸福度や安心感を得られると考えられています。
そしてバイオフィリアの概念を、オフィスの空間デザインに取り入れた『バイオフィリックデザイン』が今、注目を集めています。
『バイオ=生命・自然』と『フィリア=愛好・趣味』が組み合わされた造語『バイオフィリア』という考え方は、1984年にアメリカの学者、エドワード・O・ウィルソンのバイオフィリア仮説にて発表されました。
「人は潜在的に、他の生物や自然との結びつきを求めようとする本能や傾向がある」と提唱された仮説では、自然と触れ合うことで、人間は幸福度や安心感を得られると考えられています。
そしてバイオフィリアの概念を、オフィスの空間デザインに取り入れた『バイオフィリックデザイン』が今、注目を集めています。
そこで今回は、
について解説します。
バイオフィリックデザインがもたらす、オフィス環境の変化についてぜひ、参考にしてください。
バイオフィリックデザインを導入する企業は増えています。
なぜならオフィス内に自然や植物、水や自然光などの生命を感じる環境を取り入れることにより、従業員のストレス軽減や生産性の向上、モチベーションアップなどの効果が期待されているからです。
バイオフィックデザインには、以下の3つの基本原則が存在します。
それではこの基本原則について、詳しく解説していきます。
自然との直接的なつながりとは、具体的に接触する直接体験をさします。
例えば、時間の経過や季節を感じさせる光を取り込んだり、空調をコントロールして空気を感じたり、また水の音や生きものが泳ぎ回る水槽を設置したり、植物や花の鉢植えを配置するなど、直接触れることができる要素を取り入れることをいいます。
間接的なつながりとは、自然を感じるイメージとの間接的な接触です。
例えば、自然をイメージできる風景写真や絵画などを飾ることや、天然素材を使用した木材や生地などのインテリア、アースカラーやナチュラルカラーの自然な色味をオフィスに取り入れることで、間接的な効果を得ることができます。
最後に空間に対する反応とは、建物の設計や空間の変化に対するや幸福感などです。
建物の設計やデザイン自体に人は快適さを覚えます。天井が高いことや照明の光量が丁度良いなどは、快適で心地よい空間に感じる要素であり、人に安心感を与えます。
自然とのつながりを意識したオフィス環境の改善が今、従業員に好影響が期待できるとし、バイオフィリックデザインをオフィスに取り入れる企業が増えています。
次に、バイオフィリックデザインのメリットについて、下記にまとめました。
それでは詳しく見ていきましょう。
イギリスにあるエクセター大学のクリス・ナイト博士は研究結果(※1)で、観葉植物をオフィスに置くだけで、従業員たちの作業効率や記憶力などの基礎的能力が向上したと発表しました。
18ヵ月におよぶ実験では、質素なオフィス環境よりも観葉植物が机から見えるように配置した空間で仕事をするだけで、従業員の生産性もアップしたことも分かっています。
また、ナイト博士は観葉植物がなくとも、照明の明るさや香りの変化、写真の設置といった要素だけでも同様の効果が期待できると語るなど、間接的なつながりでも人への好影響はあるとしています。
(※1)Plants in offices increase happiness and productivity
https://www.theguardian.com/money/2014/aug/31/plants-offices-workers-productive-minimalist-employees
アメリカにあるビジネス心理学研究のロバートソン・クーパー社は、大規模な調査を実施し驚くべき調査結果を発表しました。(※2)
世界16ヵ国(フランス,ドイツ,イギリス,中国,インド,UAEなど)のオフィスで働く従業員7,600人を対象に、バイオフィリックデザインの与える影響について調査した結果、自然や生命を感じられる要素をオフィスに取り込むことで、具体的に従業員の生産性・創造性・幸福度が上昇したのです。
その中でも幸福度はなんと15%もアップするなど、アメリカのアップル社やアマゾンなど世界的大企業でも、バイオフィリックデザインが多く採用されています。
(※2)【ロバートソン・クーパー社】ヒューマン・スペース:世界中の職場におけるバイオフィリックデザインの効果
オフィス環境を改善することは従業員にとって好影響があることは分かっています。
農林水産省農産局のオフィスにおける花や緑の導入調査(※3)では、従業員の満足度の高い職場では6割以上が花きを飾っているのに対して、満足度の低い職場では花きは3割程度しか飾られていませんでした。また、オフィスに花や緑がある効果として「部屋が明るくなった」という回答が最も多く、他にはリラックスできるなど、花や緑があるだけでオフィス内に好影響をもたらすことも分かっています。
(※3)花や緑の効用・家庭とオフィスへの導入状況に関する調査について
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kaki/flower/f_R2itaku/R2itaku.html
オフィス内に観葉植物を用いたグリーンアメニティ効果に関する大学の研究(※4)では、観葉植物に好印象をもつ集団と、そうでない集団に分けて、観葉植物が人の心理や生理反応に及ぼす影響を実験しました。
その結果、植物に興味がある集団では観葉植物によるリラックス効果や眼精疲労、ストレス軽減などグリーンアメニティ効果がみられました。同時に植物に興味がない集団の理由を調べた結果、虫や植物の世話を嫌う傾向があり、グリーンアメニティ効果はみられませんでした。しかし、一部の人間の中には、観葉植物が視界に入るだけで無意識にグリーンアメニティ効果が人体に影響するという結果もでています。つまり、観葉植物にあまり良い印象を持たない人でも、緑を無意識に感じるだけで効果がでたことは、バイオフィリックデザインの原則である「人の空間に対する反応」が作用したとも言えるでしょう。
そして最後に、ポトスやサンセベリアといった観葉植物は化学物質を除去する効果があり、ホルムアルデヒドやキシレン、トルエンやアンモニアなどといった物質を、除去するといった空気浄化能力が期待できるという結果がでたことで、観葉植物の無限の可能性を示す結果となりました。
(※4)観葉植物のグリーンアメニティ効果に関する研究 (第 2 報)植物に対する好みが心理・生理反応に及ぼす影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2016.6/0/2016.6_189/_pdf/-char/ja
今回は、バイオフィリックデザインがもたらす、オフィスの空間デザインとその効果について詳しく解説してきました。
人間が潜在的にもつバイオフィリアの観点から、バイオフィリックデザインを意識したオフィス空間にすることで、無意識にストレスの軽減や幸福度の向上があがり、またオフィスの緑化が集中力を高め、業務効率と生産性の向上に影響を与えるなど、たくさんのメリットがあることが分かったのではないでしょうか。
また、幸福度やストレスなどの個人の問題は、仕事をしていく上で離職に直結する問題です。イオフィリックデザインを導入することにより、エンゲージメントやモチベーション向上につながれば離職率の低下にもつながることでしょう。
そして、企業によっては大規模なレイアウト変更やフェイク植栽、メンテナンスなどの管理が難しくなる場合もあります。また、維持担当の観点からも管理を怠るとカビや害虫の発生などを考慮すると、専門業者への依頼をおすすめします。
本記事が、バイオフィリックデザインを検討している方への参考となれば幸いです。
舛田 羊一
大手家具メーカーで家具の設計、国内上場企業のオフィスプランナーとして勤務。その後、2015年に現研究所を設立し、国内外のミュージアムプロデューサーやライブラリーなどの空間プロデューサー兼デザイナーとして活動中。
春うららかな書房では、空間プロデューサーとしてオフィス空間のトータルプロデュースを行っている。
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