オフィスにグリーンを配置する際のレイアウト事例


オフィスを緑化する企業が増えてきた現在、グリーン(観葉植物)をどうレイアウトするか検討しているところも少なくないでしょう。

オフィスのグリーンは適切に配置を行えば、企業のイメージ向上に貢献し、従業員の癒しになり作業効率にもつながるなどプラス効果が期待できます。しかしレイアウトが不完全であればコストをかけた割にマイナスの影響が出てしまった、という事態にもなりかねません。

すでにオフィスの緑化を実現し、成功している企業も多く存在するため、それらの事例を参考にするのも、失敗しないための良い対策です。

この記事ではオフィスにグリーンを配置するメリット、レイアウトの考え方、おすすめの植物、具体的なレイアウト事例などを紹介していきます。

壁一面にグリーンのあるオフィス

オフィス空間をグリーンで演出

オフィスのスペースをグリーンで演出しようというモチベーションが多くの企業で高まっています。

以前なら職場環境は少しばかり無機質でも当然といった風潮があったかもしれませんが、近年は働き方改革の推進、従業員のメンタルケアに対する理解の深まり、そしてコロナ禍で在宅ワークが広がったことによるオフィス環境の再定義など、さまざまな要素がオフィスグリーンへの注目につながっていると考えられます。

言い換えれば、「居心地の悪いスペースは仕事の効率が悪くなる」としっかり主張できる認識が生まれたということになります。

もちろん、単にオフィスグリーンを採用すればいいというのではありません。不適切にレイアウトされたグリーンは維持コストがかかるだけで効果を発揮せず、居心地の悪い空間になってしまう可能性があることにも注意が必要です。

企業で最初に考えるべきは、どのようにオフィスグリーンをレイアウトすればいいかということです。

壁一面のグリーン

オフィスの広さに応じたグリーンの配置

空間の広さによって、オフィスグリーンのレイアウトを変える必要があります。

ここでは、それぞれのスペースによるレイアウトの事例のアイデアを紹介します。

ガラス張りのスタイリッシュな会議室の写真

小規模オフィスのレイアウト事例

小規模のオフィスでは、そこに働く人間の動線を妨げない配慮が大切です。シンプルで主張しすぎない観葉植物を邪魔にならない場所へ設置するのがいいでしょう。

もしスペースの都合で動線の邪魔になる可能性が高いと感じれば、そこであきらめてしまうのではなく、天井を有効的に活用してみる発想もあります。

天井の照明あたりをオフィスグリーンで飾ることで、デザイン性を重視しつつも、仕事をしている人たちの緊張緩和に役立たせることができます。

小規模オフィスにレイアウトするグリーンの発想には、もっと自由性があります。

たとえば、オフィスの側に公園や街路樹などあれば、オフィスから見ることができる植物の景色を「自社のグリーン」と解釈して利用するのもいいでしょう。窓の側に机を設置し、透明ガラスを使用すれば、快適な環境を低コストで実現することができます。

また、自社で都度植物を購入するのではなく、定期的にレンタルする方法も検討する価値があります。サイズが小さいタイプであれば、毎月数千円程度という金額からレンタルすることが可能です。

さらに人工の観葉植物(フェイクグリーン)を選べば、メンテナンスの負担もなく、低コストで小規模オフィスの緑化を実現できるでしょう。

中規模オフィスのレイアウト事例

オフィスの規模が大きくなれば、それだけ必要とされる植物の数が増えるため、オフィスグリーンにかかる導入費用の負担は高くなる傾向にあります。

ただ、植物の種類や配置レイアウトによっては、費用を安く抑えられる方法もあるため、専門家からアドバイスを受けることも検討してみる価値があります。

中規模のオフィスであれば、壁面緑化(ウォールグリーン)を導入したレイアウトも良いでしょう。

壁面緑化は、空気の浄化においても良い効果を期待することができます。

企業において、空気の浄化はとても大事な課題です。壁にあしらった植物によって光合成が行われ、自然あふれたパワーで空気の入れ替えが可能となります。見た目にもインパクトを与え、仕事をしている人たちに安らぎと心地よさをもたらします。

ただし壁面緑化も植物であるため、お手入れは欠かせません。虫の発生に対しての対策も必要です。壁面緑化を行うモチベーションがあっても、美しい状態を維持できなければメリットは半減してしまいます。

また、壁面に対してふさわしい工法を選ぶことも大事です。オフィスに合わない工法で施工をしてしまえば安全性が失われる危険があるため、壁面緑化をレイアウトするには専門業者とよく話し合いをすることが大切です。

大規模オフィスのレイアウト事例

大規模オフィスの場合、ビルの屋上などに芝生を敷いたり、草花を植えたりする屋上緑化なども検討してみてはいかがでしょうか。

屋上は日光がたっぷり当たるため高温になりやすい場所です。屋上の温度が上がればオフィスの温度も上昇するので、快適な室温を維持するためにエアコンなどで多くのエネルギーを消費してしまうことでしょう。

屋上緑化によって温度上昇をある程度まで緩和でき、逆に、冬場は断熱効果アップにより省エネに貢献します。

また、グリーンの中でのランチをしたり、休憩したりすることはオフィスで働く社員にとって有意義なリフレッシュタイムとなり、日々の業務へのストレス軽減にもつなげることができます。

大規模な企業によっては貸し農園として屋上スペースを貸し出したり、社員がお気に入りの野菜などを栽培したりする事例もあり、都会にいながら植物や野菜を育てる楽しみを得ることができます。

さらに、強い日光による熱や紫外線は建物の劣化を早めてしまいます。屋上緑化を実現することで、紫外線が直接建物に当たらないようにし、建物自体の劣化を防ぐ効果も期待できるでしょう。

おすすめの観葉植物とレイアウトの注意点

迷ったときにおすすめの観葉植物

オフィスグリーンのレイアウトにどのような観葉植物でも自由に取り入れて問題はないのですが、迷った際には、以下のようなものがおすすめです。

「ポトス」は、家庭でもよく購入されている人気の植物です。葉の色や模様の違う品種がたくさんあるため、オフィスの雰囲気や配置場所などに合わせ自由に選ぶことができます。

「モンステラ」は、切れ目がある大きな丸い葉をした観葉植物です。葉の生え始めのころは、小さなハート型をしているところも人気のポイントです。丸い葉にはあたたかさを感じられ、オフィスに安らぎ感を与えてくれることでしょう。直射日光が好きではなく、水やりの頻度も少なく済ますことができるため、その点でもオフィス向きだと言えます。

「パキラ」は、色あざやかな緑の葉が魅力の観葉植物です。大きめのサイズのものであれば、来客の目に触れやすいエントランスや応接室へ設置するといいでしょう。

観葉植物のレイアウトの注意点

観葉植物を効果的にレイアウトするためには、以下のポイントに気をつけてください。

植物は種類や品種によって、葉や茎の色がいろいろ異なり、たとえば「グリーン」といっても深緑や蛍光緑のようなカラーの違いがあります。赤や黄色などの色合いも積極的に取り入れ、カラーのトーンの違いを意識してオフィスをレイアウトすれば、さらにセンスの良い空間を演出することができます。

また、北欧スタイルやミッドセンチュリースタイルなど、統一感があっておしゃれなスペースを創造するには、洗練されたデザイン性の植木鉢も欠かすことができません。

小規模のオフィスの広さであれば、観葉植物の数にも配慮が必要です。観葉植物はただ多いほど良いという発想では、逆に仕事がしづらい環境を作り出してしまうことになるため注意が必要です。

オフィスのエリア別グリーンの配置

ここではオフィスの規模にかかわらず、主要なスペースごとのレイアウト方針について解説します。

グリーンへの水やり

エントランス・受付のレイアウト事例

エントランス・受付は、企業の顔となる部分であり、来訪者や取引先の第一印象に大きな影響を与えます。

第一印象は今後の取引にも影響するため、設備やデザインなどに気を配り、不快感を与えない空間作りが必要です。

壁面緑化

先述した壁面緑化は、エントランスや受付スペースにも適しています。天井までの壁をグリーンで覆い、床は木目調にして全体的に自然感を演出します。

企業ロゴサインはあえてシンプルに白系などをもってくるといいでしょう。

また、全体の壁をグリーンで覆ってしまうのではなく、少しボリュームダウンさせることで、洗練された雰囲気を作り出すことができます。

オフィスグリーンをさりげなくレイアウト

オフィスグリーンのレイアウトは、エントランスに鉢植えをひとつ置くだけでも効果を期待することができます。

はじめてでいきなり壁面緑化は不安……という場合は、鉢植えを置くことからはじめてみるといいでしょう。それだけでもセンスのある会社だとお客様にも思ってもらうことができます。

ロビー・待合スペースのレイアウト事例

ロビー・待合スペースは、より利用者の居心地の良さを追求したい場所です。

ラウンジベンチやロビーのソファにグリーンをマッチングさせることで、雰囲気が和み、快適性をアップさせることができます。

高さが40cm以上あるキューブ型や長角プランター、高さ60cm以上のトールプランターなどでパーテーションのような役割も兼ねたレイアウトもおすすめです。

会議室・ミーティングルームのレイアウト事例

会議室やミーティングルームは、どうしても事務的で殺風景になりがちです。そのような場所にオフィスグリーンをレイアウトすれば雰囲気がなごみ、コミュニケーションの活性化を期待することができます。

少人数しか入らないウェブ会議のための狭いミーティングルームでも、オフィスグリーンをレイアウトすれば閉塞感の緩和に役立ちます。

一般的に、狭いスペースの方が活発な議論が生まれやすく、広めのスペースはリラックスした雰囲気になるため冷静な意見が出やすいと言われています。それぞれの目的や用途によって最適なパターンの会議室を用意することが理想ですが、スペースがない場合はオフィスグリーンのパーテーションをうまくレイアウトすることで空間の広さを変えることもできます。

リフレッシュスペースのレイアウト事例

従業員の休憩スペースも、オフィスグリーンを取り入れたい場所です。

床に配置する場所がないような場合でも、テーブルの上にひとつ植物があるだけでほっとする空間にできます。

テーブルの上に置ける小さな植木鉢は、デザインやカラーがとても豊富にあります。デザインが同じでも違う色合いを並べれば、よりポップで躍動感のある空間になります。

リフレッシュスペースでは、より開放感を得られるよう目につきやすい場所に緑を配置しましょう。視覚的にも快適さをアップさせ、リラックスできる環境がととのいます。あえて業務エリアとはイメージを変えて、ONとOFFを切り替えられるようにすることが大事です。

まとめ

今回は、オフィスグリーンのレイアウトの仕方について解説しました。

ひとくちに「オフィスグリーン」と言っても、単に小さい鉢植えを置くことや、大きな観葉植物を片隅に配置することであったり、天井からつるしたり、壁面緑化などさまざまな選択肢があります。

そして、オフィスグリーンは適切にレイアウトすることで最大限の効果を発揮できます。この記事も参考にしながら、より大きな効果をもたらすオフィスグリーンのレイアウトを考えてみましょう。

壁一面にグリーンのあるオフィス

監修

舛田 羊一

舛田 羊一

  • 舛田建築design研究所CEO
  • 春うららかな書房 家具事業部 部長
  • 一級建築士、環境経営士、宅地建物取引士

大手家具メーカーで家具の設計、国内上場企業のオフィスプランナーとして勤務。その後、2015年に現研究所を設立し、国内外のミュージアムプロデューサーやライブラリーなどの空間プロデューサー兼デザイナーとして活動中。
春うららかな書房では、空間プロデューサーとしてオフィス空間のトータルプロデュースを行っている。

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