オフィスの壁面緑化でおしゃれな空間をデザイン


 

オフィスを緑化することで、仕事をしている方々のストレスを軽減させることができ、円滑なコミュニケーションへと導くことができます。

企業にとっても、とてもメリットがあることなので、今回は壁面緑化について詳しく解説をします。

オフィス緑化した風景

オフィスの壁面緑化とは

まずは、オフィスの壁面緑化とは何かを理解することからはじめてみましょう。

「壁面緑化」とは、おおかたオフィスなど建物に存在する壁を植物で覆うことを言います。

壁面緑化の中には、オブジェのようなものも含めても問題はないでしょう。

単に見た目がいいという理由でオフィスを壁面緑化する企業もあると思いますが、壁面緑化の目的はそれだけにとどまらず、ヒートアイランド対策であったり、空気浄化であったり……と、いろいろな効果を期待することができます。

既に積極的に緑化を取り入れている企業も多くあります。また、企業が存在しているエリアによっては条例化され、壁面の緑化や、屋上の緑化を行うことが取り決められていることもあります。

たとえば、東京都では、敷地面積が1,000 ㎡以上ある土地においてオフィスなど建物を新築や増改築するような場合、壁面緑化、屋上の緑化が義務付けられています。「義務」という言葉にいささか抵抗あるという方々もいらっしゃるのかもしれませんが、もちろん、そこには壁面を緑化することによるいろいろな良い効果を期待できるからです。

外壁緑化

オフィスの壁面緑化が出来る場所

では、みなさんが仕事をしているオフィスでどのような場所に壁面緑化が出来るのかを確認しておきましょう。

壁面緑化が可能なのは、「エントランス」「玄関」「会議室」「商談室」「執務室」「休憩スペース」など、壁面を有効活用できる場所であればどこでも問題ありません。

壁面緑化

エントランス・玄関

屋内緑化は、オフィスの内装を豪華にしてくれる手段です。オフィスにあるエントランスの壁面を緑化すれば、グリーンを強調したインパクトのあるデザインを取り入れることができます。

そのような場所に壁面緑化を導入することで、企業の雰囲気も様変わりさせ、一日をそこで過ごす社員の気持ちもぐっと明るくしてくれることでしょう。

エントランスや玄関は、いわば企業の「顔」なので、壁面緑化することで、会社にいらっしゃる取引先企業やお客様にもいい第一印象を与えることができます。

会議室・商談室

壁面緑化は大掛かりなものだけでなく、オフィスの会議室や商談室の一部の壁面に、アートタイプのグリーンを設置するだけでも、そのスペースの雰囲気をがらりと変えることができます。

グリーンを身近に感じられる環境は、心理的にも、物理的にも仕事をしている人たちにいい影響を及ぼすことは、既に様々な研究や調査により明確化されているので、会議室や商談室にもグリーンを取り入れることによりリラックス効果が得られ、より前向きな話し合いに発展することが期待できます。

執務室・休憩スペース

オフィスを緑化する一番館簡単な方法はといえば、鉢植えの観葉植物を置く事です。

まず執務スペースや休憩スペースなどの、人たちの動線に触れない場所に鉢植えを置く事からスタートして、一体どのような効果があるのかを確認してみるといいでしょう。限られた空間の中に多様な鉢植えの設置は難しいため、そこから壁面を活用した緑化を進めていくと効率よく居心地のいい空間を作ることができます。

休憩スペースを緑化することによりオフィスで仕事をしている人たちが抱えている日々累積するストレスを都度解消させることができ、次の仕事へのモチベーションを高めることができるでしょう。

オフィスを緑化するメリット

オフィスを緑化することで、どのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

ウォールグリーンのイラスト

ストレスを軽減

オフィスを緑化する大きなメリットは、精神面にもたらす影響が大きいことで、オフィスで仕事をしている人たちの集中力や作業効率を高めることができ、自社の生産性向上につなげることができます。

脳波のアルファ波が増大する

オフィスの中に植物が置かれていても、特別それ程変化はないと考えている方もいるでしょう。その場合、インテリアとして植物以外のものを設置するかもしれませんが、実は、植物がもたらす効果は、インテリアとしての効果だけではないことが様々な研究からわかっています。

植物からは、「フィトンチッド」と呼ばれる物質が放出されているのですが、このフィトンチッドには、人たちの脳波のアルファ波を増大させる効果があります。

自然を生きる木々が、自身を守るため、葉や幹から発散する揮発性物質がフィトンチッドです。フィトンチッドは、防カビであったり、防菌、防虫……などといった効果を期待できるのですが、それ以外にも、私たちが森の中で深呼吸することで、気分が落ち着いてきたり、さわやかさを感じさせてくれます。

これがまさに森林浴効果と呼ばれているものであり、森林の木々が放出しているフィトンチッドが、脳内のアルファ波を増加させているからです。

脳波が、ガンマ(γ)波(30ヘルツ)の状態でオフィスのデスクで頑張って仕事と向き合っても、不安感を抱いたり、興奮したりして、仕事に集中できない事態が起こります。

ベータ(β)波(13~30ヘルツ)の状態であれば、ある程度緊張感をもち、テキパキ仕事がはかどっている状態です。しかし、緊張はしているため、継続することでそうとうストレスを蓄積してしまうことでしょう。

そこで、重要視したいのが、7~13ヘルツのアルファ(α)波です。アルファ(α)波を意図的に増大させることで、仕事をしている人たちはリラックスでき、集中力を高めることができるでしょう。

【参考】療法的活用を目的とした身近な森づくりに関する研究

https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/nourin/kenkyuuhoukoku/documents/tokubetuhoukoku03.pdf

視覚疲労を軽減

「緑視率」とは、都市における緑量を示す指標のひとつであり、人の視界に占める緑の割合をあらわしていて、豊橋技術科学大学の教授らの研究結果においては、オフィススペースの中での緑視率の向上と、心理的改善効果の関係が明確化され、緑視率が10%から15%であれば、人たちの抱えているストレスがおおよそ11%以上軽減できることが報告されています。また、緑視率がアップすることにより、心理的なリラックス効果が高まることが報告されています。

さらに、国土交通省で行われた実験・調査では、緑視率が25%を超えた状態になれば、人たちは「緑が多い……」と感じるようになり、同時に、

  • やすらぎ感がある
  • さわやか
  • 潤いがある

と感じる人の割合が高くなることがあきらかにされています。

【参考】

緑視率

https://xtech.nikkei.com/dm/atcl/word/15/327920/101000034/

都市の緑量と心理的効果の相関関係の社会実験調査について(国土交通省)

https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha05/04/040812_3_.html

円滑なコミュニケーション

どの企業も仕事がしやすい環境とは何か?ということを真剣に考えていることでしょう。

社内の緑化は、モチベーションを高めてくれる方法であり、かつ、円滑なコミュニケーションを行うためにも有効的手段です。

日本でのオフィス環境は無機質的であり、温かみを全然感じられないオフィスというものも散見します。このようなオフィスでは、気持ちが沈んでしまうこともあるでしょうし、仕事の向き合い方にも支障をきたすことがあるでしょう。

日本の仕事環境は、よく言われることですが、他国と比較すれば遊び心に欠けているところがあります。一方で、外資系のIT企業やベンチャー企業などにおいては、仕事場を明るく楽しいものにしようとする努力や工夫が強く感じられます。

たとえば、パーティションや敷居を取り払ってしまってスケルトンスタイルにし、社員の方々が往来しやすい開放感のあるスペースを創造することも、ひとつの方法としてとらえることができます。

デスクについても、それぞれ個人個人に机が割り当てられるわけではなく、その一日の中で空いている机を見つけて、適当な場所にパソコンを置いて作業を行う、フリーアドレス制を採用している企業も多くあります。

会議や打ち合わせも風通しの良い場所で行うことを心掛け、一室のスペースにこだわらずスタンド式のテーブルを自由に使用し、立ちながら気ままな雰囲気で行われている現状があります。

このような環境を構築することで、企業内におのずと存在してしまう管理職と平社員の距離であったり格差を狭めることができ、社員が肩書にとらわれることなく意見を言うことができたり、会議で共通した目標やビジョンを持ちあわせることができ、切磋琢磨して社内の目標へと邁進できるようになります。

オフィスの緑化も、オフィスの中に自然を積極的に取り入れることで、開放的で風通しのいい環境を作り、管理職や平社員の距離や格差をなくす手段であり、社内のコミュニケーションが良好となり様々な斬新なアイデアが行き来することでしょう。

オフィスにどう緑を取り入れるといい? 壁面緑化を含め検討してみよう

最近特に緑のあるライフスタイルが注目され、ちょっと注目してしまうような珍しい植物や、スタイリッシュな園芸アイテムを扱っているお店も増えつつあります。

このようなお店に入って見回すだけでも、オフィスを緑化するいいインスピレーションを得ることができるのではないでしょうか。

オフィスの中でグリーンを取り入れてみたい場所として、手始めに個人スペースがあります。

一日の大半をデスクワークに費やす方々も決して少なくない中で、パソコンの画面から視線を外したとき、なにげなくグリーンが視界に飛び込んでくる環境であれば、それだけで一瞬の安らぎを得られることは間違いありません。

それほど無理をしなくても、デスクの上で大きな場所を必要としない観葉植物も多くあるので、そのような小さな植物から取り入れてみましょう。

しかし、グリーンを置きたいけれど、今の場所には余裕がないという方々も多いでしょう。植物を天井から吊るすようなハンギングポットも有効ではあるのですが、スペースに余裕がない場合は、壁面緑化を検討してみてはいかがでしょうか。

壁面緑化は難しいかも……と考えて何もしないより、まずは、できることから気軽に向きあってみるのも一つの方法です。屋内に限らず、屋外に目を向けてみると、環境面にも配慮しつつ夏の酷暑のシーンで朝顔などのつる性の植物を育てて、グリーンのカーテンを設置することは、日本独特の癒される壁面緑化の取り入れ方といえるでしょう。屋内からも窓越しに見ることができますし、このような方法であれば、企業内で植物を育成する経験に加え、実のなる植物であれば収穫の喜びを共有することができるでしょう。

グリーンのあるオフィスでの仕事風景

まとめ

オフィスにグリーンを取り入れてみたいと思うものの、日々の仕事に追われて、忙しくて手入れをしっかりできるかわからない、せっかく購入したのにすぐに枯らしてしまいそう、ということを心配する方もいるでしょう。

社内コミュニケーションも兼ねて、まずは、社内のみなさんで一緒にオフィスの緑化について、どのように考えているのか、導入するとしたらどのタイプ(本物・フェイクグリーン)にするのか、どんな問題点があり、どうすれば解決できるのかなどを話し合ってみるといいでしょう。

オフィスの緑化を実践するには、観葉植物を置くスペースにも限界があるかもしれませんが、大きなスペースは必要ない壁面緑化であれば効率的なオフィス緑化が可能です。

また、壁面緑化にもさまざまありますが、屋内となると本物の植物ではなく、フェイクグリーンを活用したものを利用するとよいでしょう。虫や水やりの心配もなく管理の手間も格段に少なく済むことが大きなメリットです。

壁一面をグリーンで覆うのはちょっと、という場合は、額入りのアートタイプや、デコレーションタイプもありますので、絵画の代わりにグリーンを取り入れることもぜひ検討してみましょう。

屋上緑化

監修

舛田 羊一

舛田 羊一

  • 舛田建築design研究所CEO
  • 春うららかな書房 家具事業部 部長
  • 一級建築士、環境経営士、宅地建物取引士

大手家具メーカーで家具の設計、国内上場企業のオフィスプランナーとして勤務。その後、2015年に現研究所を設立し、国内外のミュージアムプロデューサーやライブラリーなどの空間プロデューサー兼デザイナーとして活動中。
春うららかな書房では、空間プロデューサーとしてオフィス空間のトータルプロデュースを行っている。

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